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CASE STUDY

[ モノコト技術情報 ] ポリプロピレン(略称:PP)

ポリプロピレンは、プロピレンを重合させた熱可塑性樹脂である。工業的に入手可能であり、熱いと溶けて冷えると固まる性質を持っている。樹脂の中でも加工性が高くて比重も軽く、比較的安価です。また、燃やしても有毒ガスを発生しないため、環境にも優しい樹脂です。しかし透明度は余り無いので、透明度が必要な物には不向きです。

 

ポリプロピレンは比較的硬いうえに折り曲げに対しても白化はしますが、中々破断しません。また、電気を通しにくい(絶縁性が高い)というところもあり、用途は幅広く使われています。但し、屋外での耐性(耐候性)は弱いため、紫外線、風雨が直接当たる部分への使用は避けたほうが良いです。また他の汎用樹脂と比較して、耐薬品性にも優れています。酸、アルカリ、沸騰水、鉱物油など多くの薬品に対して侵されないという優れた耐薬品性を有しています。

 

<ポリプロピレンの主な特徴>

●メリット

熱可塑性樹脂
加工性が高い
有毒ガスを発生しない
折り曲げ耐性が強い(粘りがある)
電気を通しにくい
耐薬品性が高い
比較的安価
耐熱温度が比較的高い

●デメリット

透明度が低い(乳白色)
耐候性、耐紫外線性が低い
接着や印刷が困難
調理器具には不向き(耐熱温度がそこまで高くない)

ポリプロピレンの耐熱温度は一般的には90度~100度となっています。ポリプロピレンの中には耐熱性能を上げたものもありますが、劇的に改善することはありません。通常使用の範囲設定は90度~100度が主流ですので、火にかけたり電子レンジに入れて調理したりという用途には向かない材質です。そんな広く使われている汎用樹脂ポリプロピレンですが、表面特性に於いては実は使い勝手が悪い部類になります。

どういった点が使い勝手が悪いとされているかですが、

1.接着することが難しい
2.印刷の載りが悪い

今ではポリプロピレンを接着できる接着剤もありますが、かなり特殊なものです。
印刷をする場合、表面に特殊な加工が必要となり、工数が増えてコスト高となります。

 

<主な活用範囲>

日用品から工業部品、電化製品、自動車部品等、加工方法も様々な方法が取れるので、使用用途、箇所は多岐にわたります。雑貨やそのパーツ、電化製品の外殻、内側の絶縁パーツ、薄く伸ばせば袋にもなるため、梱包資材にも利用できます。

 

<主な加工方法>

●射出成形(インジェクション成形)

金型と呼ばれる製品形状を作るために必要な型に、溶けた樹脂を流し込んで製品形状を作り出します。その後、金型の温度等により冷やし、樹脂を固めます。冷えて固まった樹脂は、金型を開いて取り出します。チョコレートを熱して溶かして、型へ流し込み、冷やして固める事に似ています。

●押し出し成形

金型と呼ばれる形を作るために必要な型に、溶けた樹脂を押し当てて製品形状を作り出します。理論上無限に長い製品形状を作り出すことが出来ます。トコロテンをトコロテン突きで押し出して大きな塊から細長い形を作る事に似ています。

●中空成形(ブロー成形)

ストロー状に溶かした樹脂を、上から下にぶら下げます。ぶら下げたストロー状の樹脂を囲む様にして製品形状を作るために必要な型で挟みます。ストロー状に溶かした樹脂を、風船を膨らませる様に内側へ空気を送り込んで膨らませます。型の中で膨らんだ樹脂は型に押し付けられて、製品形状を作り出します。

 

<製品での活用事例>

洗い桶(ポリプロピレン製)

●材料選定理由

ほぼシンク内での使用となり、場所と用途が限られていたため、その場所で想定される条件として、①耐熱温度100度以下(冷えていない油をシンクへ直接流す場合はその範囲を超えるが、通常行わない)②耐冷温度③耐薬品性能必須(酸性・アルカリ性・中性)の為、ポリプロピレンを選定した。またサイズが大きいため、原料価格を抑える必要があることと、水を張って使用するという点から、本体重量が重くなりすぎない様にする必要が有る。しかし剛性は必要であるという点も選定した理由となる。

●製造時の注意点

形状は単純ですが、ストレートのラインがデザイン的に重要なので、ストレートがしっかりと出るように、金型製作時に細かい調整をしました。また脚部が右画像の様に、部分的な厚肉成形となります。ポリプロピレンは熱することで溶けて、冷やすことで固まる熱可塑性樹脂なので、冷えて固まる時に厚みがあれば有るほどヒケと呼ばれる収縮が大きく発生するため、この部分も内側を膨らませてヒケを抑える調整をしました。

実は横の穴が無ければ、初期投資および製品単価はかなり落とせます。しかし製品仕様上必要になるため省くことは出来ません。この部分は成形を行う際の金型に「スライド」という機構を取り入れて、一度の成形で形状を作っています。強度および成形時に安定する様に、縁の部分は通常肉を厚くするのが主流ですが、今回のデザインを活かすため、厚み等で最大限強度と安定性を調整しました。