CASE STUDY





いまの時代、モノづくり企業はただモノをつくっていては生き残れません。モノにまつわる「コト」までつくっていかないといけないというのですが、それは一体どういうことなのでしょうか? 「共」のつく3つのキーワードをヒントに探ってみましょう。
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◇目次
- 人がココロと財布をひらくのは“共感”できるコト
- “共感”のポイントはユーザー目線
- コトづくりを加速する“共有”
- “共創”で一社の限界を越える
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人がココロと財布をひらくのは“共感”できるコト
生まれたときから色んなモノがある時代に生まれた世代の人には想像しにくいかもしれませんが、戦後は何もモノがありませんでした。日本のモノづくりの企業はそんな中から、誰もが生活に使うものを手にとれるように大量のものを効率よくつくることを目指してきました。東日本大震災など災害からの復興を目にすると、もしかしたらイメージがわくでしょうか。
日本のモノづくり企業、いわゆる製造業は戦後、ものすごい勢いでモノをつくり、それをすべての消費者に行き渡らせました。ひと通りの生活水準が維持できるようになると、企業は欧米を視察してどんどん新しいものを取り入れ、日本中に新しいモノを行き渡らせました。そのような企業活動が経済を成長させ、日本を豊かにしてきたのです。
ところが、現代はモノがいくらでもあって、すでに飽和状態です。ただ安いだけ、ただ品質が良いだけでは消費者はモノを買いません。今、急いで買わなくてもモノはあるし、安くても趣味にあわないモノなら要らないのです。いかにモノを持たないで生活するかを考える人さえいます。時代は確実に変わったのです。
今はモノを買うよりも誰かと何かをすること、一緒にその気分や空気、時間を共有することが重視されます。たとえば、カメラならカメラというもの自体の性能よりも、皆が笑顔の写真が撮れるとか、撮った写真を共有できるとか、そういったモノを使ってできるコトの方が重視されます。
ですから、いかに早く安く効率よく品質の良いモノをつくるかという、かつての製造業ががんばっていたモノづくりのやり方では時代に合いません。消費者がそのモノを使ったら、どんなコトができるのか、そこを考えていかなくてはなりません。モノではなくコトをつくっていくこと、製品・サービスが提供された先にある目新しい価値感、が求められているのです。
具体的な例でいえば、任天堂の「Wii」もそうでした。ゲーム機というモノを改良することではなく、ゲームをして皆が楽しむ瞬間に注目したことで、爆発的なヒットにつながりました。ゲーム機とソフトという「モノ」ではなく、子どもからお年寄りまで、身体を動かして遊ぶという「コト」が、人々の購買意欲を誘ったのです。
こちらにも、そんな「コトづくり」の事例をご紹介しています。
・ 新潟の家具屋SHS
・ 四国サイコーダイガク
・ 無印良品 くらしの良品研究所
・ オイシックス みんなのキッチン
・ 日本食研 モノコト事例
・ 任天堂とアップルにみるモノコトシフト
・ 「競争」から「協創」へ|ドコモの協創型課題解決
・ リッツカールトンのおもてなし、IKEAのロイヤリティプログラム
・ プラスチック成型機の松井製作所
・ タニタ食堂のタニタ
・ モノもコトもデザインするクリエイティブ集団
・ 居心地のいい文具店
・ 「想像力を競う甲子園」MONOCOTO INNOVATION始動!
・ 入れるのは子どもだけ!
・ ていねいに暮らしをデザインする。
モノづくりの企業は今、どれだけ良いモノをつくれるかではなく、広い視野をもち、消費者が「いいね」と共感できるコトを見つけていくことが求められているのです。
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“共感”のポイントはユーザー目線
では、消費者が共感できる「コト」はどのようにして見つけたらよいのでしょうか。
消費者が共感できる「コト」を見つけるためのポイントは「ユーザー目線」です。モノづくりの仕事をしている人も、会社を出れば一人の消費者であり、ユーザーです。たくさんのモノのなかから欲しいものを選んで買っていますよね。共感できる「コト」を見つけるには、その視点でモノを使う場面を考えてみるのです。
たとえば、帰りにコンビニでお酒を買うとき、欲しいのはアルコールでしょうか? 欲しいのはリラックスした気分だったり、誰かと乾杯するコトだったりしませんか?
そんなふうにモノが使われる場面をイメージして、どんなモノがあったら、もっとうれしいかを考えてみましょう。メーカーでずっと同じモノをつくっていると忘れてしまいがちですが、ユーザーの立場に立ってみると思い出せるニーズがたくさんあると思います。
もし、どうしても「モノ」起点で考えるクセが抜けないのであれば、ユーザーの声を拾いにいってみてはいかがでしょうか。実際にユーザーが買ったり、使ったりしている現場に行けなくても、これだけSNSが発達している時代ですから、インターネットのなかからリアルな情報を探すこともできます。自社のネット会員にアンケートをとってみてもいいですし、TwitterやFacebookでトレンドをチェックしてもいいでしょう。直接的な答えは見つからないかもしれませんが、きっとヒントが見つかるはずです。また、消費者や市場の声だけを頼りにするだけでなく、製品・サービスの開発者自信の熱い想い、情熱=高い熱量も、共感を呼ぶ大きな原動力になります。
ここでひとつ、どうやって「コト」を見つけるのかという事例をご紹介します。
MONOCOTOでサポートしたある会社は、カー用品をつくっていました。そこで、カー用品を使う、車いじりの場面について考えてみました。すると、昔と変わりいまの時代においてはユーザーが思うようにクルマいじりのスペースがとれなかったり、家族に気兼ねしながら作業していることに気付きました。
ここで、ユーザーの気持ちになってみると、どんなモノが欲しいでしょう? スペースが狭くても快適に作業できるモノがあったらいいなと思いませんか。あるいは「パパが車をいじったら車内が楽しくなった!」と見直されるようなモノもありですよね。肩身の狭い思いをしているユーザーはそれがあれば、今後は胸をはって作業できるでしょう。単なる1人称の「クルマいじり」ではなく、仲間で楽しむクルマいじりの空間づくり、家族や友人と共にする「クルマ」を起点とした楽しい体験や時間づくり。モノから始まる新しい時間、体験、インパクトこそ、ヒトが古来より本質的に「いいな」と感じるコトなのではないでしょうか。
そんなふうに、徹底的にユーザー目線に立つことで、どんな「モノ」をつくればいいのかが見えてきます。
ユーザー目線にたつこと、そして強い想い、情熱を持つこと。これが“共感”を得るコトづくりには重要な要素と言えます。
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コトづくりを加速する“共有”
では、ユーザーが“共感”できるポイントを見つけ、その要素を開発するモノに織り込んだら、それで終わりでいいのでしょうか。実は、それだけでは不十分です。モノがつくり終わっても、ユーザーがそのモノを手にいれ、「コト」を経験するまではコトづくりは終わっていません。もっと「コト」を盛り上げていくことを考えてみましょう。
話は変わりますが、最近、無料で手に入るものが多いと思いませんか? たとえば、これからの季節だと、年賀状のデザインデータなんかもそうですね。色々な種類のデータがタダで手に入ると思います。これを無償で提供しているのはどんな人たちでしょうか。
郵便局、デザイナー、印刷会社、カメラやプリンターのメーカーなど、年賀状に関わるモノをつくっている人たちです。
デザインデータが増えて、好みのデザインや気に入った文例のものが見つかれば、適当に済ませようと思っていた人たちも年賀状を書こうという意欲が増しますよね。そんなふうに年賀状を書くという「コト」を盛り上げているのです。そうすれば必然的に「モノ」も必要になります。
何も自社だけでやろうとしなくても良いのです。たとえば、話題になってほしい言葉をハッシュタグにして、SNSを盛り上げることもできます。お菓子ならば、そのお菓子のあるシーン、洋服ならば、その洋服を使ったコーディネイトを投稿し合って、ユーザー同士、盛り上がってもらってみてはどうでしょうか。
同じ「モノ」を使う人たちで一緒に楽しい気分や体験を“共有”してもらい、共感を広げていく。コトづくりはモノをつくって終わりではありません。
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“共創”で一社の限界を越える
ITやインターネットの発達によって、日本国内のみならず、全世界の人々と仕事ができるようになりました。クラウドサービスを利用すれば、物理的な場所にとらわれることなく、働き手や資金提供者と出会うことも可能です。
いま、私たちがやろうとしているのは「モノづくり」ではなく「コトづくり」です。コトづくりに関わる人たちは物理的な環境を共有する必要はありません。さらにいえば、同じ組織である必要もないのです。
一社ですべてのプロセスを完結しようとすると、資金や人材、設備などのリソースにも限りがありますし、発想にもどうしても偏りがでてきてしまいます。けれども、その過程をオープンにして色々な人を巻き込んでいくと、これまでにはなかったモノが生み出されていきます。固定観念にとらわれないユーザーの声をきけば新たな発想もうまれるでしょうし、他企業と協力することで自社にない技術やノウハウをとりいれることもできるでしょう。
「コト」をつくるために、さまざまな立場の人や組織と協力していく“共創”。これはモノづくりの会社が新しく意識したいキーワードです。
我々MONOCOTOでも、この“共創”をとりいれていて、デザインや開発、製造や流通など、それぞれの分野に長けたチームをその都度編成しています。そうすることで、これまでにはできなかったサービス展開ができるようになりました。
「コトづくり」のパートナーを得る上でもまた“共感”が大事です。外から見てモノづくりよりも活動内容が分かりにくくなるからこそ、共感してもらいやすいように、どんな会社なのかということを世に知らしめていかなければなりません。クラウドファンディングサービスはまさにそうですね。どんなコトをつくりたいか、すなわちプロジェクトの内容に対して賛同が得られれば、出資して応援してくれる人たちが集まります。
これからは「モノを買う消費者」 vs 「モノをつくって売る企業」という対立構造ではなく、「コトづくり」をする企業とそれに共感する人や組織という構図で社会を眺めていってはどうでしょうか。ユーザーや関連企業、求職者や資金提供者、官公庁や学術機関、教育機関まで、あらゆる人や組織がパートナーになる可能性があります。
お互いに“共感”できる仲間とそれぞれのリソースを“共有”し、“共創”していく。3つのキーワードから「コトづくり」を考えてみました。いかがでしたか。
MONOCOTOは「モノづくり」を得意としてきたコシオカ産業を中心に、多方面からプロフェッショナルが集まり、お客さまの「コトづくり」を支援しています。
これまでに取り組んだ事例をご紹介していますので、こちらもぜひご参考に。
- MONOCOTOプロジェクト事例①
「終わりの見えない会議がなくなる!ユーザー目線の商品開発のやりかた」
http://www.monocoto.life/case/478.php
- MONOCOTOプロジェクト事例②
「企画立案から量産までワンストップのサポート体制で開発の効率が向上」
http://www.monocoto.life/case/526.php
- モノコト成功事例
「建築資材メーカー様ご依頼の収納ボックス開発」
http://www.monocoto.life/case/180.php
「大手外食チェーン様向けノベルティ開発」
http://www.monocoto.life/case/76.php
「大手通販事業者様向け住生活雑貨開発プロジェクト」
http://www.monocoto.life/case/8.php